知足です。

 本日3/17に、地域の方々が主体となって企画された、九州北部豪雨災害2017「復興への資源発見シンポジウム」(→筑後川新聞)が開催されました。

 朝倉市杷木地域生涯学習センター「らくゆう館」には、白木地区や東林田地区、黒川地区などの被災地の方々が集まり、ほぼ席が埋まっていました。会場入口では、地域の方々手作りのお饅頭や湧水コーヒーがふるまわれ、あたたかいホスピタリティを感じました。


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  主催の「朝倉市に小水力発電を進める会」は手作り水車による小水力発電「白木発電村」を開村・運営されていました(→2016年西日本新聞)。しかし、昨年の九州北部豪雨において白木地区は甚大な被害を受け、この水車小屋も流されてしまったそうです。このような経緯から、小水力発電に関わる地域の方々が、地域資源を再考し、新たなスタートをきるシンポジウムを企画されました。


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  基調講演として「災害から人が立ち上がるためのふるさとへの愛」という題目で岡田真水先生(兵庫県立大学名誉教授)が登壇されました。岡田先生は2/17のあまみず社会研究会でもご講話くださった方です。慈愛と知性あふれるお話に引き込まれました。
悲しみは愛の対象の喪失により起こること」「愛する対象を記憶にとどめ更新する仕組み(祭りや供養)の大切さ」を説いてくださいました。私は、悲しみを慈しむとかく「慈悲」という言葉に想いを馳せました。また お話から、過去の災害の傷跡が、美しい自然の景観に内包されていることに気づかされました。先生のお話は、その荒ぶる自然に鍛えられた人々の合力と心の美しさを讃え、背中を支えてくれるようでした。

 続いてパネルディスカッションとして6名が発表しました。島谷幸宏教授(九州大学工学研究院)と研究室学生2名が豪雨災害の調査分析結果について、ていねいに説明してくださいました。河道封鎖による「段波現象」には息を呑みました。島谷先生は、多くの災害地域に復興の手を差し伸べてこられた河川工学の専門家です。先生から具体的な対応策(河川の広さ調整、分水方法)とその実例が示され、建設的なイメージおよび希望が被災地の方々に届けられました。先生は集落がまとまって災害に抗する「集落防災」の重要性を説かれました。白木地区の小水力発電を支えてこられた先生は、今回のシンポジウムの企画においても大きく貢献されています。

  次に、吉田東明氏(福岡県教育庁総務部文化財保護課)から、朝倉市の文化財被害状況とレスキューの実際が紹介されました。被災した国指定重要文化財「普門院本堂」(県内最古の建物。747 年創建)のお話をうかがいながら、朝倉地域の歴史の深さを感じていました。吉田さんらは、「被災した方々の、心の支柱として文化財」を守ろうと地道な実働を重ねておられ、頭が下がります。獅子舞用のミノ(シュロ)を作る「選定保存技術保持者」の井上輝雄氏が豪雨で亡くなったという報告では、深い心痛を感じました。

 私からは、流木再生プロジェクトなど創造と地域資源の関係→「復興とアート」) 、および自然を敬ってきた英彦山修験の歴史と文化を説明しました。私の先祖(曽祖父の頃)は、廃仏毀釈という宗教弾圧を受けました。多くの山伏が山を降りる中、山に残った数少ない山伏の1人です。彼らは貧しくなるとわかっていても(炭鉱の坑木を出したり、お土産物屋などをしながら)山で生き抜きました。私はそのような先祖を心から尊敬し感謝しています。被災者の方々が苦難を受け乗り越える姿を子供達はみています。(曽祖父の思いが私に伝わったように) 会うことのできない子孫も、後世で皆さんのことを誇らしく語ることと思います。

 三谷泰浩教授(九州大学工学研究院)からは、朝倉市復興計画についてお話がありました。 三谷先生は土木工学の専門家であり、九州大学九州北部豪雨災害調査復旧復興支援団の団長です(島谷先生と私もメンバー)。豪雨災害直後から、数日おきに開催される9つの地域の住民会議のほぼ全てに参加されています。被災地に真摯に向きあい、地域の方々から(九大団員の間でも)、島谷先生とともに絶大な信頼を得ておられる方です。復興計画の中で防災と生活再建に加え、自然環境や景観、歴史、文化の大切さを説く文言を加えてくださいました。また、住民の声を反映できる計画づくりに心を砕かれたとのこと。先生の被災地に寄り添う不動の佇まいに、感銘を受けました。

 白木地区復興支援協議体から、林清一代表と仲野健一郎君(九大学生)がお話をされました。当事者からみた豪雨被害の実際は、真に迫るものがあり胸が痛みました。土砂に埋もれた水車を掘り出した様子や、小水力発電に尽力してきた仲野君のプレゼン(手紙の紹介)などに、岡田先生がお話になった合力の美しさを感じました。



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 シンポジウム会場には、黒川地区の共星の里の柳さんもいらっしゃいました。柳さんは3/11に九州大学ソーシャルアートラボのフォーラム「アートを通じた地域の再生」で登壇してくださいました(→SALフォーラム)。同じくシンポジウムに参加されていたふるさと創成の会の皆さんと顔をあわせることができ、新しく生まれた繋がりから、よい動きが生まれてほしいと思いました。(右からおふたりめは、取りまとめの平田昌之さんの奥様)




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 昨年の豪雨災害後から彫り始めた災害流木の木彫「朝倉龍」(→知足HP)が完成しました。2017年の7月26日に流木集積所(旧朝倉農業高校)で出会った樟(くす)の流木です。杉岡さん(杉岡製材所)と作業を行った日の暑さを思い出します。あの日は流木をたどり、寺内ダム、黒川の共星の里まで足を運びました。流木には沢山の泥と石がかんでいたため、杉岡製材所で高圧洗浄機をかけていただきました。大学に材が届いてからは、外で1人コツコツ彫り進めましたが、この冬の寒さには手がかじかみました。
 彫っていると、この木が蓄えてきた時間(樹齢132年)の重みや意志のようなものをふと感じる時があります。木からあたたかい気持ちを感じ‌る、と言っても信じてもらえないかもしれませんが、実際そうなのです。木の素朴な素材感を活かすために、細かく工芸的に彫り込みすぎないよう気をつけました。龍の九似(モデルになった9の動物たち)は以前彫ったことがあるものが多く、架空のものを彫っている感じはありませんでした。龍のヒゲは、英彦山の鹿の角を削り出して作りました。
 統廃合後の杷木小学校に寄贈される予定です。これをみた子供達が元気になってくれたら嬉しい、という気持ちだけで作ったものです。(「千と千尋の神隠し」というアニメのハクという龍に似てると友人に言われました)。これからの朝倉を守ってくれる存在として、子供達に安心を与えてほしいと願います。