200119_SAL1_ページ_1

200119_SAL1_ページ_2


 知足です。3/5,6開催予定の復興支援「東屋セルフビルドと植栽ワークショップ」のチラシです。災害被災木を再活用し、復興ガーデンに東屋(あずまや)を建て、草花を植栽するワークショップです。ぜひご参加ください。本年度の活動報告を以下に添付します。
-----

 豪雨被災地の土砂の前で茫然としたあの日から、「いつかここが命を思う美しい場として再生する」と、心に描いてきました。 アートは、自然からの呼びかけから生まれることが多く、その究極の形は「ガーデン」ではないかと思います。日々変化する自然界と人間の心が調和する場を共創し、自然と人間、人間同士のつながりを紡ぎ続けるからです。   
 2019年度は、その「復興ガーデン」が現実化した1年でした。朝倉市黒川地区住民は、災害後、100世帯から20世帯に激減しています。私は、離村者の一時的な帰村経験を担保し、また地域外からの「関係人口」を増やす場づくりの必要性を感じていました。強制的ではなく、そこにある美しさ、喜ばしさに浸るために立ち寄りたくなる場。地域外からの意識継続のために、関心をつなぎとめる何らかの仕組み。それらを実現するあの日のビジョンが、「アートとしての庭の共創」だったのです。

IMG_6364

 災害時、共星の里(旧黒川小学校)には大量の土砂や岩石が流れ込んだため、多くの樹木が弱り、枯死しています。災害岩石を活かし、樹木を再生(土壌改良して植樹)することを目指すとき、学ぶべきものは「禅」の庭でした。禅僧の作庭家・枡野俊明先生を招き、共星の里で造園案を練ったのは昨年度のことです。  

IMG_3990-1

 2019年度はまず、複数の企画案について地域住民の方々に意見をきくところから始まりました。アンケートには、養蜂を始めたいという夢や、植樹したい花木などが記されていました。それらをもとに、九州大学学生と植生計画と庭案を作成しました。
 9月から本格的に庭づくりに取り組みました。被災した住宅廃材を消炭に変え、土壌改良と鎮魂につなげました。空気や水の循環を改善するための側溝づくり、剪定。また、災害流木の木材チップによって土を養生し、岩石をレイアウトしました。最後に、参加者それぞれが未来を思いながら植樹しました。身体を通したこれらの活動は、参加者の意識に「被災地への想像力を喚起する何か」を刻みました。そこに植えた自分の木から、被災地を感じるような感覚です。3月には、災害木による東屋を制作し、花の植栽を行います(予定、上記ちらし)。

IMG_6316

 この庭づくりと並行しておこなったのは、復興支援団体紹介小冊子「かたり」の制作です。社会人と学生によって取材を行い、朝倉市、東峰村、添田町で創造的な活動を行う21団体の記事をまとめました。地域内外の相互理解と意識継続、「支え合いの輪」が広がることを願うものです。実際に、この冊子を手にしたことが契機となり、福岡青年会議所(JC)主催の復興シンポジウムが開催されています。

2019_SAL_katari_ページ_01
 
 また、復興ガーデンを舞台にした、学生達によるアート活動も生まれています。庭の岩石や樹にプロジェクションマッピングし、パフォーマンスを行うものです。年末の寒い夜の公演にもかかわらず、被災地の方々が集まってくださいました。庭に様々な光が満ち、アートによってひとつになった心が、解放されたひと時でした。


 
 庭は、命ある自然物が成長し循環しながら、日々変化を刻むアートです。今後、この庭から感じたことを、連歌や音楽、パフォーマンス等で表現しあう「喫茶養生会」を開けたらと考えています。  



(毎日新聞記事2020年2月20日)
IMG_7715