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(視聴者の方より提供)
 知足です。九州大学ソーシャルアートラボ、復興支援チームによる、「黒川庭園と喫茶アート養生会」のライブ配信を11/14に行いました。この配信は、九州北部豪雨災害の復興支援として行ったアート活動と交流の様子を地域内外の方々と鑑賞し、感じる心を分かちあうものです。
(コメント付きの当日の映像は以下のリンクになります。最初の30秒は飛ばしてください)プログラムは、5つです。●日本茶インストラクターによる実演指導。●黒川庭園と東屋・泰庵作り。●短詩五七五、連句の輪。●音と身体のワークショップー朝倉の子供たちとー。●デジタル枯山水とアートパフォーマンスともいきとなっております。

■ソーシャルアートラボは、アートを通して九州北部豪雨災害の復興支援をおこなってまいりました。特に、被災地の福岡県朝倉市が昔の英彦山修験道文化圏だったことあり、芸術文化によって心の復興をめざすこととなりました。
黒川地区の廃校利用の美術館「共星の里」にも大量の土砂と岩、流木が流れ込み、樹々は次第に弱っていきました。そこで、修験道や禅の文化を参考に、地域内外の方々と協力し、岩や流木を再活用し、植樹しながら、美しい庭をつくるプロジェクトを行いました。

 本日、「喫茶」という言葉をかんむりにかかげているのは、修験道とお茶が文化的に結びついていること。またお茶とアートが、ともに命を養うものであるからです。
1191年に、臨済宗の僧・栄西禅師が中国から茶樹を持ち帰り、山伏たちの手によって北部九州の修験道寺院にいち早く伝播しました。栄西がかいた『喫茶養生記』には「茶はまた養生の仙薬なり」とあり、薬に近いものととらえられていました。山岳信仰では、お茶は、山の英気を授けるものとして祈祷の際配られていました。英彦山には、雪舟が滞在中に制作した、国指定史跡の石庭「雪舟庭園」もあり、ここで茶をたしなんだといわれています。
 修行において、聖霊、さまよえる霊魂も、茶の味わいで満足する、成仏すると考えられていました。茶もアートも、人と万物の聖霊をつなぐものととらえることができます。  

1.日本茶インストラクターによる美味しいお茶の実演指導講師/山科康也(山科茶舗代表 日本茶インストラクター) *用意するもの《茶葉、きゅうす、お湯、小さじ、 湯呑みを2つ。100ccぐらいの物が最適 》山科茶舗→HP
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山科茶舗を営む山科さんに、美味しいお茶の淹れ方を習いました。山科さんのお茶は、まず包み込むような香りにひきこまれます。それから口に含むと甘みと旨味で驚き、スーッとしみこむように広がり、気が付くと落ち着きを取り戻しているという、すごい力がありました。


2.共星の里の黒川庭園と東家(泰庵)づくり  https://youtu.be/VEzFDWuuWtI  (動画)

コメンテーター/清水邦義(九州大学准教授)、岩間杏美(油山自然の森)、尾藤 悦子(共星の里 ゼネラルマネージャー)、杉岡 世邦(杉岡製材所)

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豪雨災害の岩や流木を要素とした「庭」を共創し、再生を進めた様子を紹介します。豪雨災害からの再生のための「庭」作りとして、今年3月に被災木を再活用して黒川共星の里に「東屋・泰庵」を制作(→制作報告ページ)。その様子を映像で紹介しました。その後、オンラインミーティングで以下の4人の方々にお話をうかがいました。

  • 清水 邦義先生:九州大学農学部准教授。森林生物資源の自然の香り成分の心身に及ぼす影響や、自然素材を原料としたアロマ・住環境等の基礎から社会実装までの研究を展開されています。杉などの木材の家が疫病の感染率を下げたり、疾病を治癒する可能性について科学的に研究されており、大変興味深かったです。
  • 岩間杏美さん:油山市民の森職員として自然観察の機会を市民に与えています。とくに、きのこや粘菌などの菌類に詳しく、別名「きのこちゃん」として親しまれています。コロナ禍で一般参加者は募ることができませんでしたが、黒川共星の里を散策され、目に見えない、土の中のいのちの循環について、優しく、楽しく教えてくださいました。
  • 杉岡世邦さん:家業「杉岡製材所」三代目として、主に、住宅・社寺・文化財等の木材をあつかい、板倉など、木造建築の魅力を発信されています。被災木による東屋をつくりたい、というイメージは最初から私の中にありました。この大仕事を杉岡さんに依頼したところ、九州大工会の池上さんとともに、素晴らしい東屋・泰庵を作り上げてくださいました。コロナ禍によって、一般参加者を募集できない中、堂園さん、押川さんといった大工さん、農学部の佐藤先生、共星の里、ソーシャルアートラボ関係者が一体となって奇跡的に東屋を建てることができました。杉岡さんが、災害後の苦しみから、創造活動を通じて、前を向き歩き出すプロセスを話してくださり、勇気をいただき感動的でした。
  • 尾藤悦子さん:2000 年から母校でもある山里の廃校利用の美術館「共星の里」の立ちあげ、企画・運営を行っておられます。創作服「Kien」を立ち上げ、ファッションデザイナーとしても活躍しておられます。お料理の腕も一品で、多くの来訪者たちが尾藤さんのお料理に癒されています。20年間、たゆむことなく歩まれてきた足跡そのものが、アートの可能性を開いてきました。その重みとやさしさあふれる素敵なトークでした。
  • 柳和暢さん:美術家。共星の里のアートディレクター。共星の里のクリエイティビティを牽引されてきたすごい方です。現在怪我のため入院されておられますが、急遽zoomに参加してくださいました。柳さん、お話を拝聴できて嬉しかったです。

3.短詩五七五、連句の円環  

 http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~tomotari/circleofpoetry.html (連句の輪紹介ページ)

コーディネーター/知足 美加子、白水裕樹 AIサポート/田中 圭太郎(九州大学修士2年)

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 コロナ禍の様々な分断があるなか、被災地の方々と、創造する心をつなぎあうために、私の方で企画したアート活動です。被災地の「自然」や「記憶」をテーマに、季語にこだわらず、短詩五七五の下の句を、次の方の上の句に繋ぎながら創造のリレーを行いました。前の方が詩にこめた思いを受け止め、今の自分の心を表現し、そしてそれを次の方にたくす。心と心がつながる文化の営みを垣間見たような気がしました。詠み手は、復興支援活動を紹介した「かたり(→冊子PDF)」の被災地の取材先の方々が中心となっています。様々な「心」の円環について、復興支援チームの心強いスタッフである白水さんが心をこめて読みあげてくださいました。

 修士2年の田中君が、AIによる短詩五七五の作成アプリケーションを開発し、この企画を支えてくれました。養生会でも実演し、拍手がおこっていました。災害の土砂流入に耐え、生き残った共生の里のいちょうの木をイメージして詠んでいます。

*田中君のAIによる短詩づくりサポートアプリは以下のページで体験できます(→インタラクティブ五七五)。田中君のAIの修士研究でもあり、よろしければ以下に感想をお願いします(→アンケート)


4.音と身体のワークショップ ー朝倉の子ども達とー https://youtu.be/qAtCScp5RCY (動画)

開催場所/普門院(国指定重要文化財)

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朝倉市にある「普門院」は、創建747年と伝えられる福岡県最古の木造建築物です。被災地の小学生:あさ・くる子供自然スコーレのみなさんが、参加してくれました。この日のために、普門院・地域の方々が清掃活動を行ってくださりありがたかったです。


  九州大学修士2年の山口君が制作した、コロナをモンスターにみたてたアニメーション《突然失礼致します!コロナ世代、映画で闘う。》を子供たちと鑑賞しました。見えない恐怖を、形にすることで理解するきっかけとなります。クリエイティブパワーで、コロナ怪獣は倒され、生まれ変わります。  

   九州大学4年の嘉松君のジェネラティブ・アートです。自分が生まれた誕生日をたねとして、プログラムによって育つ、世界にひとつだけの数学的なアートです。子供たちひとり一人に、作品を印刷したものをプレゼントし、とても喜ばれました。  

九州大学4年生の森君による、AR(拡張現実)とジャグリングを組み合わせたパフォーマンスARのプログラムも、パフォーマンスも森君がおこなっています。電子ゴマが宙を舞い、エフェクトが広がるたび、子供たちは喜び、大きな歓声があがっていました。  

バレエ講師の永松美和さんによる「身体表現」ワークショップです。自然の中にある動き身体をつかって表現することで、子供たちが自分の存在を深く感じ、確かなものにします。松本亜樹さんによる絵本「木」の読み聞かせもありました。その内容をもとに、枝をもって木になりきってみた子供たちは、木の気持ちを想像し、やさしくよりそっていました。  

   最後に、九州大学助教で、作曲家のゼミソン・ダリル先生の「音狩り」というワークショップです。風、水、虫、鳥、木、石の音に耳を澄まし、創造的に再現します。静かに耳をすますと、自然の中に豊かに音があふれていることに、まず驚きます。そして、子供たちは、落ち葉の音、アリが歩く音を観察し、自分なりに再現していきました。水は、木や体の中に流れていると表現する子供たちもいて、その澄みきった感性の豊かさに感服しました。

*普門院での活動について、SALの学術研究員の村谷さんが、アーティストトークを優しく丁寧にまとめてくださいました。学生も教員も自分の制作活動に対する、子ども達のあたたかくポジティブな反応は、大きな励みとなりました。


5. 黒川共星の里でおこなわれた無観客公演、デジタル枯山水「調身・調息・調心」とアートパフォーマンス「共生(ともいき)」の映像紹介とアーティストトーク

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●九州大学修士2年、密岡君の「デジタル枯山水」は、水の流れの中で、ひとが身体と息と心を整え、静かにたたずむと周囲に水文がひろがります。水の流れのなかで、ひとが出会い、去っていき、痕跡が後を追う様が美しく表現されていました。
  デジタル枯山水「調身・調息・調心」https://youtu.be/gtRrJG4LzlI


●アートパフォーマンス「ともいき」は、九州大学4年、口羽君の作品です。同級生たちが協力し、演者は山中さん、美術は逆瀬川君、音楽は國弘君が担当しました。豪雨災害前の日常、災害の苦しみ、そこからの再生の物語が表現されています。黒川庭園の岩やイチョウ、演者、光が響きあい、黒川のこれまでとこれからを表現しました。黒川地区の誇りだった「ホタル」が豪雨災害で失われてしまいました。その「蛍」がとぶ風景を、プロジェクションマッピングで校舎に再現しました。パフォーマンス中に植えたユーカリ(花言葉、再生)は、そのまま共星の里で生き続けています。

  アートパフォーマンス「共生(ともいき)」https://youtu.be/Z6Pz2PuFAwA →(フル20分) https://youtu.be/KkSHPDvUKR0



*共星の里 黒川INN美術館の野外スペースでの活動について、九州大学助教でアーティストの栗山斉先生が、未来への展望など学生たちの気持ちを上手に引き出してくださいました。


みなさん、目に見える世界の復興とともに、心の復興も大切です。心もまた命があり、エネルギーをうしない、傷ついたときには手当が必要なのです。心のいのちを養うためには、創造すること、アートの喜びの力が必要だと私は思っています。私たちの創意工夫によって、少しでも微笑んでくれる人が増えたなら、嬉しいです。以下のアンケート(Googleフォーム)に感想等かいていただければ幸いです。https://docs.google.com/forms/d/14sbCxY_SoYZh0f9NR3CIc59fpt-nJHrWnSghXF8E2oM/edit        (知足美加子)

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 【感想:被災者の方、関係者より】

■本日も、ありがとうございました。

普門院、いい空気を子どもたちの中に感じることができました。ここが普門院?と思ったくらいです。

また、黒川の蛍は被災前、「真夏のクリスマスツリー」でした。田んぼの奥の川のそのまた向こうにある杉の木々に蛍が止まって、一斉に光を放ちそして一度に消える。その繰り返しをしていました。

きょうのプレゼント感謝しています。そしてこれから迎えるクリスマス・未来にも、プレゼントを見つけられるような、そんなひと時でした。皆様にもよろしくお伝えください。本当に、ありがとうございます。


■3年前に悲惨な体験をしてしまった朝倉の子供達、3年後に九大の学生さん達による癒しによって心救われた朝倉の子供達、大人になった時、あの日生き残った意味をよく噛み締めて、今回得た体験を次の世代に伝えて頂きたいと願っています。朝倉の子供達に今伝えたい言葉は「藍より青く」です。知足先生の活動には感謝しかありません。


■今日はお疲れ様でした。そして有難うございました。多くの方々の朝倉を思う気持ち、胸に染みました。支えて下さる人の気持ちに報いられます様、今後とも、一切怯む事もぶれる事も無く復興に向けて頑張ります。


■とっても面白かったです。見ている方もあっという間に時間が経ってしまいました。お疲れ様でした。


■当日を振り返って、音探しや身体で表現等を子どもはどう対応するのか?を見れて子ども達の新たな発見がありました。そしてあの普門院でやった事にとても意義があったと感じています。歴史あるお寺なのに私たち大人も数十年訪問していませんでした。そこに子ども達と九大の皆さんとイベントを行った事で改めて普門院の偉大さを感じ次世代に繋げれたのではないかなぁと思ってます。本当にありがとうございます。


■素晴らしいイベントでした。どうもありがとうございました。お茶と聖霊の話は、興味深々です。お疲れ様でした。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。


■私たち被災地被災者に向き合って下さる皆さんの深い愛情、気持ち、心、それに裏打ちされた行動に いつも感謝感動です。しばらく先の復興に向けてまた後押し元気を頂きました。プログラムの内容全てに心打たれました。ありがとうございます。あの九州北部豪雨災害から無くしたものもありましが、それ以上に、あの経験があってそこから繋がるもの、得るもの。多くの方がの尊いお心を頂きました。このプロジェクトに参加して頂いた皆様の本当に温かい心を頂き、その想いは光となってこの黒川の地を照らしております。

 蛍の乱舞は、それぞれが、最初はバラバラに光を放つ。しかしそこに共に仲間がいることを感じ、バラバラだった光のリズムも共鳴し合い、一斉に同じリズムになって、同じ波長でこの場を照らすように。また、波紋が作り出す円のように…。共鳴し合う波動です。山があり、川が流れ、草木の自然の中に人々は自然とのかかわりを通じて暮らしを営み続け、地域が生まれ文化を育ててきた、修験道、禅の心。この場が皆さんの第二の故郷のような誰でもここに帰って来れる心のよりどころでありたい。自然と共に安らかに、今からも星のように、蛍のように輝き、互いを認め合い共に響き合うことが出来たらそう願っております。どうか、くれぐれも学生の皆さんによろしくお伝えください。そして密岡君や口羽君はこれから社会に出て壁もあるかもしれませんが、この黒川からエールを送りますし、いつでもそばにいます!星を眺めて、この黒川でご自分たちが、一から作った大変さも踏まえ、その喜びも思い出し、つらくなったらこの地でやったことを思い出してくださいね!いつも応援しております☆そしていつでも、田舎のおばあちゃんのところに帰ってくるみたいに第二の故郷として遊びに来てください!待っています。

 今回、知足先生をはじめ皆様からたくさんのエネルギーを頂きました。本当に心から感謝申し上げます。共星の里に、お越し頂ける皆さんに、あの災害の日何が起きたのか、そしてどのような想いでこの「泰庵」、黒川アートガーデンが出来たのかを、黒川の歴史も踏まえ、感じるこころを分かち合いながら、人と自然とアートを結び、より一層、この場の可能性を信じ、これからも、活動を続けて参ります。今後共にどうぞよろしくお願い致します。本当にありがとうございました。お疲れだと思いますどうぞ、お身体を大切にご自愛ください。深謝 (共星の里 尾藤悦子)