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朝日新聞夕刊2020.10.9


この度の令和2年7月豪雨災害において被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。梅雨はあけておらず、土砂災害の心配が続き、いまだ災害の渦中といえます。コロナ禍との複合災害の中、皆様のご無事を祈りながら、私は災害流木から作品を彫っていました。この作品「寒水大師と十一面観音」は、九州北部豪雨災害被災地の朝倉市杷木寒水(そうず)地区からの復興への願いを受けて、制作したものです。
 大師像についての説明は前回の記事に記載しました(→2020年5月記事)。また私のHP(→作品ページ)でも紹介しました。そこからの抜粋は以下の通りです。
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 発端は不思議なご縁でした。別件で私が朝倉を訪れた際、たまたま寒水地区の方々の集まりがあっていたのです。寒水協議会長の満生さんが、「信仰対象を制作していただきたいと連絡したところ 、本人がすぐ現れたので驚いています」というお話をされました。 これまで、杷木小学校や英彦山地区に災害被災木の彫刻(→《朝倉龍》 →《花開童子と福太郎童子》) を寄贈していたので、杷木ベースの望月さんが私の名前をあげてくださったようです。
 寒水地区の1人の女性が、豪雨災害の日の出来事を語ってくださいました。「豪雨に怯える中、白い影がみえました。その人を心配して歩み寄ると上に登る階段があったのです。上がった途端、背後から土石流が流れ込み、間一髪で助かりました」というのです。「災害後、辺りを探してもそのような方はおらず、きっと神仏の御加護だったのだと思います。その付近で流されてしまった祠を再建したいのです」とのことでした。その中には大師像と観音様が祀られていたのだそうです。 このような経緯で、私は、被災地のために小さな大師像と観音様を作ることになりました。 素材は、災害直後の2017年7月に、朝倉市の流木集積所で、ピックアップした檜(ヒノキ)です。 私は仏師ではないので、「形式通りの仏像にならなくても大丈夫ですか?」と満生会長に確認したところ、「人々の心を癒してくれるものであれば良いのです」と言ってくださいました。被災地支援はもちろん、疫病に苦しむ世界の人々の平安を祈り、心をこめて作りました

 私の推測では、朝倉における「大師」は「行基(668-749年)」を指すのではないかと考えています。大師とは、偉大なる高僧を指します。朝倉市には、行基が作ったとされる日本最古の木造建築「普門院」(国指定文化財)があります。普門院は、天平19年(747)聖武天皇の勅願をうけ、行基が筑後河畔に創建したものが、度重なる水害のために現在地に移築されたものと伝えられています(→朝倉市役所のHP)。

 行基は、東大寺大仏の開眼を行った僧侶として有名です (しかし若い頃は、政治と宗教の分離を主張したり、階層を越えて困窮者を救い布教したため、朝廷からは弾圧を受けていたそうです)。特に灌漑・治水工事を行い、水害から民衆を救ったことの功績は大きいです。
 唐招提寺の行基像は蓮の葉を持っています。蓮華は仏教の象徴ではありますが、行基の蓮の葉は、水害から人々を守ったことを示唆しているように思えます。 行基に関して、実際に平安時代に渡来した仏教者を、福岡(太宰府)でお迎えしたという記録があるそうです。行基が、普門院建築ともに、水害が多い筑後川沿いの杷木に、治水技術を伝え、民衆の尊敬を集めた可能性はあると思います。蓮の葉は、英彦山の鹿の角から彫り出しました。
(中略)
 十一面観音菩薩像について。この観音様は、水害から救済してくれるお力があるそうです(水瓶をもっている)。復興の庭づくりでお世話になった禅僧の枡野俊明先生(造園家。多摩美教授→講演会テープ起こし)が、本年度の九州地区の大雨について、お見舞いの連絡をくださいました。そのお返事で、祈りながら制作していることをお伝えしたところ「今、先生は流木で十一面観音様を彫られているとのこと、何と素晴らしいことでしょう。 十一面観音様の真言はオン マカ キャロニキャ ソワカです。 唱えながら彫られると良いと思います。願いが観音様に 沁み込んで行くのではないでしょうか」とご教示くださいました。泥だらけだった災害流木が、彫っていると、いまだ美しい香りがする、とお伝えしたところ、以下のようなお返事をくださいました。
「中々九州の大雨がおさまりそうもなく、また、被害も広がり心を痛めております。 被災されました方々には心よりお見舞いを申し上げます。 本当に自然の猛威は治まる所を知らず、人間の力が如何に小さいかを身を持って感じる出来事です。 人間のおごりが自然を破壊し、その自然の悲鳴がこれまでの数々の災害を起こして来たように思えてなりません。 先生の彫られている十一面観音様は、先生がひと鑿、ひと鑿 真言を唱えられているとのこと、その思いと願いが観音様にしみこんで行くと 思います。そして多くの方々の心を救って行くことでしょう。 
 お送り頂きました写真を見ますと、この白く美しいヒノキの木地は 何事も経験してこなかったかのような、清らかな姿を見せてくれています。 人間も誰もが苦労と悩みを経験し、抱えて生活している訳ですが、 この観音様のように、人々の心を清らかに出来る存在で居られれば良いと思います。完成し開眼される日を楽しみに致しております。 再 拝   徳雄山瑞雲院  建功禅寺  枡野俊明 」
 九州北部豪雨災害、令和2年7月豪雨災害の苦しみが、少しでも和らぎ、癒されることを心から願い、祈っていますこの十一面観音像の右手は「与願印」です。被災地の皆さんに希望の心を与えるものになったら嬉しいです。

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【黒川庭園の喫茶アート養生会】

 2020年10月11日に、「黒川庭園と喫茶アート養生会」を行う予定です。これまで九州北部豪雨災害被災地において「黒川復興ガーデンとバイオアートー英彦山修験道と禅に習うー」(→説明ページ)を行なってきました。九州大学ソーシャルアートラボ、共星の里と協力していただいています。被災した大地を美しい庭として再生する取り組みです。
 この庭園の中で、お茶やアートを楽しむ喫茶アート養生会を開きます。小さい命の循環と森についての講演、(AIを活用した)連句会、野点(のだて)、子供たちの流木カリンバ演奏、身体ワークショップ、メディアアート×パフォーマンスなど、「感じる心」を互いに巡らせ、命を養うひとときを分かち合おうと思います。
 これは、コロナ禍における「野外でのアートワークによる多世代交流」でもあります。
 このコロナ禍において、多世代交流と自然との触れ合いの機会が減少傾向にあります。参加人数、発話を減らすことに留意しながら、野外のワークスペースを活用し、アートによる多世代交流と自然をあじわう機会を作ろうとしています。自然環境と、アート、ARやAIといったデジタル技術を組み合わせたワークショップによって、想像力を広げ、言葉に頼らないコミュニケーションを創出​しようとしています。知足研究室の学生たちのアート×デジタル×自然の作品も発表します。
 
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「黒川庭園の喫茶アート養生会」
 
10月11日(日)13:00-18:30(予定)
 
1「小さい命の循環と森」についてのレクチャー(清水邦義先生)、/粘菌探索ワークショップ(岩間杏美さん)
 
2.野点
山科茶舗代表・山科康也さんによる野外茶会+密岡稜大君のメディアアート「デジタル枯山水」とコラボ

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3.連句会(学生の田中圭太郎君がAIで、句会をサポート) 
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4.カリンバによる川の音の演奏(杷木の子ども達が制作した災害流木楽器による演奏)
+作曲家ゼミソン・ダリル先生による即興音楽コラボ
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5.子供達との身体ワークショップ(バレエ講師永松美和さん)
+森崇彰君のARジャグリングとコラボ
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6.アートパフォーマンス「共生(ともいき)」(口羽雅晴君)
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嘉松峻矢君のジェネラティブアート(数理的なアート)も楽しんでいただく予定です。

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